21.相続事業承継対策
事業承継時における自社株対策は、株数対策と株価対策がある。さらに事業承継対策特有の納税対策がある。自社株の相続税評価額の総額は、1株あたりの評価額と所有株式数の掛け算で算定する。 つまり相続税評価額を引き下げるには、1株あたりの評価額を引き下げるか、所有株式数を減らすかということになる。 株価対策は、自社株の評価を引き下げることで後継者への引き継ぎコストを抑え、引継ぎを円滑に行うためである。株数対策は経営権を維持しながらオーナー経営者の所有する自社株式を移転させる対策です。
株式の評価方法
相続・贈与時の株式の評価
相続・贈与時の株式の評価額の計算は、 類似業種比準方式、純資産価額方式、その併用方式、もしくは配当還元方式 で行う。
譲渡時の株式の評価
①個人間の売買の場合
個人同士の売買での適正な譲渡価額は時価になる。この場合の時価は 相続税評価額 による。
買い取る者が同族株主であれば 原則的評価方式 、それ以外の株主や特定の株主であれば 特例的評価方式 となる。
評価方式についてはこちらのリンク
②売主が個人で買主が法人の場合
- 売主が中心的な同族株主に該当する場合は、会社規模は 常に小会社(0.5)として評価する。
- 株式の発行会社が土地等又は上場有価証券は、譲渡時の時価で評価する (路線価の相続税評価額は使えない)
- 純資産価額方式による評価計算においては、評価差額に対する法人税額等相当額 (いわゆる37%控除)は控除しない
会社規模の調整
原則的評価方式を行う場合、会社の規模によって併用方式による類似業種比準方式と純資産価額方式の割合を決めるLが異なってくる。 会社規模を大きくする ことで評価が高くなりやすい純資産価額方式の割合を下げられるので、 会社規模を調整して評価引き下げを狙う。
会社規模の拡大
会社規模の縮小
類似業種比準方式の引下げ
①類似業種株価の引下げ
- 株価の低い類似業種を狙って 業務転換 する。
- 株式相場が下落している時期 を狙って行動に移す(株式を移転する)。
②1株当たりの配当金額の引下げ
- 直前期と直前々期の平均が元なので、 2期続けて配当を抑制 する。ただし配当をゼロにしてしまって特定の評価会社にならないように注意。
- 継続的でない配当は評価に含まれないので、記念配当や特別配当を利用する手もある。ただしあくまでも 非経常的 であること。
③1株当たりの利益金額の引下げ
- 損金計上を多くできれば当然利益を減少できる。実際の支出を伴わない方法として 引当金や減価償却費の計上 がある。
- 高収益部門を分離して会社分割するのも方法のひとつ。建物を別会社に賃貸する形にすれば貸家評価に出来る。土地も貸家建付地として評価できる。分離した別会社のオーナーは後継者にすればよい。
④1株当たりの純資産額の引下げ
- 1株当たりの利益金額の引下げで純資産価額を下げる。
- 社外流出として役員に賞与や配当を配る。損金にはならないが純粋に会社の資産は減るため純資産価額は下がる。ただし、配当に頼ると、配当比準の要素は引きあがってしまう。
純資産価額の引下げ
①時価と相続税評価額に差がある資産の取得
- 一般の相続対策と同様に、時価と評価に差がある資産(不動産、ゴルフ会員権、一般動産(耐用年数が短い物))を購入すれば相続税評価額を抑えられる。土地の有効活用という方法もあるが不動産取得後3年間は取引価額により評価するため大きな効果が表れるのは 取得後3年経過後 となってくる。
②損失の計上
- 役員への生前退職金の支給。これは支給時期を任意に決定できるので便利。また、役員が完全に会社から引退しなくても、条件を満たせば退職金として損金に算入できる。
- 高額な減価償却資産の取得や多額の消耗品の購入
- 役員に対する賞与や配当の支払い。ただし配当の支払いは類似業種比準方式の株価を引き上げることになってしまう。
こちらは「あげる」のではなくて「売る」ということになるため、後継者は買取資金の準備が必要となる。また、譲渡株式は普通株式ではなく種類株式に転換してから譲渡する方法もある。たとえば後継者に譲渡するなら 拒否権付株式(黄金株) とし、従業員持株会や取引先の場合は 議決権制限株式 が考えられる。 株式転換は定款変更が必要で、特別決議が必要。
※拒否権付株式:1株でも持っていれば議案を拒否できる強い種類株式
※議決権制限株式:議決の一部や全部に議決権を行使できない弱い種類株式
従業員持株会の活用
従業員持株会にオーナー経営者の保有株式を譲渡する。 配当還元価額で評価 する。
会員資格を従業員に限定できるため、社外流出を持株会規約によって防止できる。
中小企業投資育成株式会社の活用
納税資金対策
役員退職金の活用
死亡退職金の適正額=最終報酬月額×在任年数×功績倍率
適正額は 株主総会で承認 を得なければ損金にならない。
死亡退職金は法定相続人1人あたり500万円が相続税の非課税財産 株価評価を引き下げる方法 となる。
役員保険の活用
自社株の現金化
①自社で買い取る(自己株式の取得)
会社法に規定する要件を満たすことで、株を所有する役員などから自社が買い取ることができる( 金庫株 という)。
(1)売却した個人に対する原則的な課税関係(超過累進税率による総合課税)
配当所得(みなし配当)=譲渡価額-譲渡した株式の資本金の額 ※想定より高く売るとその分が配当とみなされるというわけです。
(2)個人が譲渡した場合の原則的な課税関係(所得税15.315%、住民税5%の申告分離課税)
株式の譲渡損益=譲渡した株式の資本金等の額-取得価額 株価評価を引き下げる方法
相続で非上場株式を取得して、 相続の日の翌日から申告期限の翌日以後3年を経過するまで にその株を会社に譲渡した場合、資本金の額を超えてもみなし配当にはならず、すべて譲渡所得として課税される。
株の相続税評価額の調べ方や相続税の計算方法と相続税対策について
株式の相続にあたって、いくつかの節税対策があるのをご存知でしょうか? あなたの相続税も想定より減らせるかもしれません。 例えば、中小企業であれば「事業継承税制」の特例の適用により、相続税が0円になる可能性があります。これは見逃せないポイントです。 ですが安心してはいけません。0円にするには要件を満たす必要があります。そして、その他の方法も活用しつつ、できる限り相続税を抑えましょう。 この記事では、株の相続税の計算や節税対策について詳しく解説します。 株式を相続した、予定のある方などは是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年3月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
株の相続税の計算方法
相続した財産は株も含めて相続税の課税対象となります。 相続税は、亡くなった人の全遺産に対してまとめて計算されます。 株は株というように財産ごとに分けて計算されるわけではありません。 相続税の計算方法については「相続税の計算方法を流れに沿ってステップごとにわかりやすく説明!」をご参照ください。
株の相続税評価額の算定方法
上場株式の相続税評価額の調べ方
- 相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値 ※相続開始日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値 前後が同じ近さの場合は、その平均
- 相続開始日の当月のすべての営業日の終値の平均
- 相続開始日の前月のすべての営業日の終値の平均
- 相続開始日の前々月のすべての営業日の終値の平均
非上場株式の相続税評価額の算定方法
経営権を支配する場合
経営権を支配する場合は、さらに会社の規模によって異なります。 大会社の場合は、類似業種比準方式 といって、事業内容が類似する複数の上場会社の株価の平均値等の各種数値を基準に計算されます。 小会社の場合は、純資産価額方式 といって、相続開始日に会社を清算したと仮定して株主一人当たりの分配額で計算されます。 具体的には、会社の総資産や負債を、原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債等の金額を差し引いた残りの金額により評価します。 中会社の場合は、併用方式 といって、類似業種比準方式で計算した株価と純資産価額方式で計算した株価を一定割合で折衷して計算します。 会社規模が大会社に近づくほど類似業比準価額方式で算定する割合が大きくなります(純資産価額方式で算定する割合が小さくなります)
経営権を支配しない場合
経営権を支配しない場合は、配当還元方式といって、次の式で計算されます。 (1株当たりの年間配当額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円) 実際のケースに当てはめてどの方式を適用すべかといった判断や、各方式による具体的な計算方式については、相続税に精通した税理士にご相談ください。
相続した株を売却すると税金はどうなる?
株式を売却して現金化すると譲渡所得が生じることがあります。 譲渡所得には所得税等の税金がかかります。 上場株式を源泉徴収ありの特定口座で売却した場合は確定申告の必要はありませんが、上場株式を一般口座や源泉徴収なしの特定口座で売却した場合や、非上場株式を相対取引で売却した場合等に譲渡所得が生じたときは確定申告を行う必要があります。 譲渡所得は次の式で計算することができます。 株式を売却した金額-(取得費(株式の取得に要した金額)+売却に要した手数料等の経費) 株式を取得した金額というのは、被相続人が取得した金額のことです。 譲渡所得には、20.315%の税金がかかります(内訳:所得税15%、住民税5%、特別復興所得税0.315%)。 なお、株式を相続した際に相続税を納付している場合は、相続税と所得税等の二重課税になってしまうように思われます。 この点、二重課税にならないように特例が設けられています。 相続によって取得した株式を相続開始の翌日から3年10か月以内に売却した場合には、譲渡所得の計算時に、相続税額のうち一定の金額を取得費に加算することができます(その分、譲渡所得が低くなります)。 この特例について詳しくは、国税庁ウェブサイトの「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」のページをご参照ください。
株の相続税対策
事業承継税制による相続税対策
- 先代経営者が亡くなった場合
- 後継者が亡くなった場合
- 後継者から、さらに次の後継者に、事業承継税制の提供を受ける贈与をした場合
- 後継者が亡くなった場合
- 後継者から、さらに次の後継者に、事業承継税制の提供を受ける贈与をした場合
事業承継税制以外の相続税対策
中小企業者に該当しない場合や後継候補者が15歳未満の場合等、事業承継税制の適用要件を満たすことができない場合もあるでしょう。 その場合には次の2種類の対策が考えられます。 ひとつは、 株の相続税評価額が低く算定されるようにする対策 で、もうひとつは 相続する株を減らす方法 です。
相続税評価額が低く算定されるようにする対策
- 不動産等の時価よりも相続税評価が低いものに投資する
- 役員退職金を支給する
- 株式数を増やす
- 配当金を引き下げることによる対策
- 利益金額を引き下げることによる対策
- 簿価純資産を引き下げることによる対策
相続する株を減らす対策
相続する株を減らすためには、相続人以外の人に株を譲渡すればよいのですが、株が外部に流出すると、経営安定性を損なうこともありえます。 そこで、経営安定性を損なわずに、相続する株を減らすには、安定株主に譲渡する必要があります。 そのための方策のひとつとして、従業員持株会が考えられます。 従業員持株会を活用した相続税対策について詳しくは、事業承継時の相続税対策に精通した税理士に相談するとよいでしょう。
上場株式の相続税対策
- 相続開始日(通常は被相続人の死亡日)の終値 ※相続開始日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値 前後が同じ近さの場合は、その平均
- 相続開始日の当月のすべての営業日の終値の平均
- 相続開始日の前月のすべての営業日の終値の平均
- 相続開始日の前々月のすべての営業日の終値の平均
- 贈与日の終値 ※贈与日が取引所の営業日ではなかった場合は、前後で最も近い日の終値 前後が同じ近さの場合は、その平均
- 贈与日の当月のすべての営業日の終値の平均
- 贈与日の前月のすべての営業日の終値の平均
- 贈与日の前々月のすべての営業日の終値の平均
以上、株にかかる相続税について説明しました。 株の相続に関する記事「株式を相続する前に知っておくべき株式相続の流れをわかりやすく説明」も必要に応じてご参照ください。 また、相続税対策については、簡単に概略だけ触れましたが、株に関する相続税対策は、考えられる対策が多岐に渡り、実施方法も複雑です。 詳しくは相続税対策に精通した税理士にご相談ください。
非上場会社の事業承継について その3
前々回のコラムで、支配権を持つ同族株主が取得する非上場株式は、「総資産価額と従業員数」及び「取引金額」に応じて「大会社」「中会社」「小会社」に分けられ、その会社規模に応じて、
①類似業種比準価額方式(事業内容が類似する上場会社の株価を基に、自社の1株当たりの「配当」「利益」「純資産」の3つの要素を比較し株価を算定する方法)
②純資産価額方式(会社の所有する資産及び負債を相続税評価額によって評価し、資産から負債を引き、これを発行済株式総数で割ることにより1株当たりの株価を計算する方法)
③両者の併用方式
のいずれかにより評価する、とご紹介いたしました。
では、それぞれの方法でどのような株価引き下げ策があるのかを見ていきましょう。
類似業種比準価額の引き下げ
①配当金を引き下げる。
②利益金額を引き下げる。
保険料を損金に算入することができる保険商品に加入することにより利益金額を引き下げることができます。保険料を損金に算入しながら積立を行い、大規模修繕・業績悪化・退職金の支給など多額な支出が必要なときに解約返戻金として受け取ることができます。
オーナーへの役員退職金は多額になり利益を大きく抑制する効果が見込まれるため、退職金を支出したタイミングで株式の移転を図ることにより、株価を抑えることができます。
適正な範囲内で役員報酬を増額することにより利益金額を引き下げることができます。
含み損(時価が帳簿価額よりも低い状態)を抱えた固定資産・有価証券・ゴルフ会員権などの売却により譲渡損失を計上し、利益金額を引き下げることができます。
傷みが激しい等の不良在庫を抱えている場合は、廃棄することにより商品廃棄損を計上し、利益金額を引き下げることができます。
回収が滞っている不良債権につき税務上貸倒処理が認められる場合には、貸倒損失として処理することにより、利益金額を引き下げることができます。
純資産価額の引き下げ
純資産価額方式における資産は、相続税評価額により評価します。
例えば、オーナー個人がお持ちの土地に法人で金融機関から1億円のお借入をして賃貸用建物を建築した場合、その建物は固定資産税評価額により評価されることとなります。固定資産税評価額は通常の取引価格のおおむね70%となります。
さらにこの建物は他人に貸し付けていることから、借家権30%を控除することができます。従ってこの建物の相続税評価額は、1億円×70%(固定資産税評価額)×(1-30%(借家権))≒4,900万円と、通常の取引価格の半分程度に下がります。
ただし、法人の株価評価をする上で1つ注意点があります。それは、法人が土地・建物を取得しても、取得後3年以内は通常の取引価格(時価)により評価される点です。従って、法人で不動産を購入して相続税評価額との差額を利用した対策の効果が出るのは4年目以降となります。
税理士 西村敦正氏
株式会社BAMC associates代表税理士。相続・事業承継を中心とする資産税が専門。1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案件に精通している。
【中小企業オーナー必見】相続時の有価証券の相続税計算方法 – 未上場株の評価方法
有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、相続・M&A大学に参画し、現在に至る。本記事の監修を務める。紹介ページはこちら。
目次 【閉じる】
- 上場株式と非上場株式の違い
- 非上場株式の評価分類の大きな流れ
- 「原則的評価方式」か「特例的評価方式」か
- 同族株主の定義や判定方法
- 「中心的な同族株主」「中心的な株主」とは
- 少数株主などの場合に用いられる、特例的評価方式(配当還元)の計算方法
- 原則的評価方式の2種類:「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」
- 3つの要素を用いて、上場企業の株価と比べる「類似業種比準価額方式」
- 貸借対照表の純資産を基準とする純資産価額方式
- 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の比較
- まとめ
上場株式と非上場株式の違い
特に中小企業のオーナー経営者一族の場合には、自社株式である非上場株式が相続財産の大半を占めることも少なくないため、評価方法を理解しておくことは非常に大切です。その概要を知っておかないと、いざ実際に株式を移転する際に、「こんなに税金が高いのか!」と驚くことになりかねません。
非上場株式の評価分類の大きな流れ
非上場株式の相続税法上の評価は、国税庁の財産評価基本通達で定められています。
その評価方法は、株の取得者の属性や株主構成、会社の規模などにより、何種類にもわけられています。
まず、最初の大きな分類が、「原則的評価方式」と「特例的評価(配当還元)方式」です。これらのどちらに該当するのかを、その株式を取得(相続)した人によって定めます。
次に、原則的評価方式に「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」とがあり、このどちらを使うのかを、主に会社の規模などにより決めていきます。さらに、例外的な「特定会社」という分類もあり、これに該当しないかも確認します。
これらを順に見ていきます。
「原則的評価方式」か「特例的評価方式」か
・同族株主等が取得した株式:原則的評価方式
・その他の人が取得した少数の株式:特例的評価(配当還元)方式
同族株主等とは、ごくおおざっぱにいえば創業者をはじめとしたオーナー一族のことです。オーナー一族であれば、極端にいえば、会社をM&A(他社に売却)して大きな利益を得るなどの選択肢もありえます。
それ以外の人、たとえば、役員や従業員が少数の株式を保有していても、通常、そのメリットは、単に配当を得られる(それさえない場合もある)くらいです。将来、会社が株式公開(IPO)をすれば莫大な利益が得られることもありますが、それは極めてレアなケースでしょう。
このような違いがあるため、同族株主等が株式を取得した場合とそれ以外とで、評価方法がわけられているのです。
同族株主の定義や判定方法
会社の区分 | 取得者の区分 | 評価方式 | ||||
属するグループの区分 | 個人の区分 | |||||
同族株主が いる会社 | 同族株主 | 取得後の議決権割合が5%以上 | 同族株主等 | 原則的評価方式 | ||
取得後の議決権割合が5%未満 | 中心的な同族株主がいない場合 | |||||
中心的な同族株主がいる場合 | 取得者が中心的な株主または役員 | |||||
取得者が上記以外 | 同族株主等以外 | 特例的評価方式 | ||||
取得者が同族株主以外 | ||||||
同族株主が いない会社 | 属する株主グループの議決権割合の合計が15%以上 | 取得後の議決権割合が5%以上 | 株価評価を引き下げる方法同族株主等 | 原則的評価方式 | ||
取得後の議決権割合が5%未満 | 中心的な株主がいない場合 | |||||
中心的な株主がいる場合 | 取得者が役員 | |||||
取得者が役員以外 | 株価評価を引き下げる方法同族株主等以外 | 特例的評価方式 | ||||
属する株主グループの議決権割合の合計が15%未満 |
同族株主のいる会社・いない会社の判断方法
最大株主グループの議決権割合 | 会社の判定 | 最大株主グループ以外も同族株主となり得るか |
50%超 | 同族株主がいる会社 | なり得ない |
30%以上50%未満 | 30%以上なら同族株主になる得る | |
30%未満 | 同族株主がいない会社 | ― |
同族関係者には誰が含まれるか
会社の区分:同族株主がいる会社
属するグループ:同族株主
個人の区分:議決権割合が5%以上
①取得者の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)
②取得者の内縁の配偶者など特別の関係のある者
③取得者に経済的に依存している者
④取得者本人やこれらの者が議決権の50%超を所有するなど一定の会社
会社の区分:同族株主がいる会社
属するグループ:同族株主
兄の個人の区分:取得後の議決権割合が5%以上→「同族株主等」に該当→原則的評価方式を適用
弟の個人の区分:「議決権割合が5%未満」、かつ「中心的な同族株主がいる場合」、かつ「取得者が中心的な株主または役員以外」に該当するので、「同族株主等以外」に該当→特例的評価方式を適用
「中心的な同族株主」「中心的な株主」とは
「中心的な同族株主」とは、課税時期において、同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹、および1親等の姻族の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の25%以上である場合の株主のことです。たとえば、お父さんが20%、お母さんが10%の株を持っていれば、夫婦あわせて30%なので、中心的な同族株主になります。
上の例では、叔母が55%の株式を保有しているので、叔母は中心的な同族株主です。一方、兄と弟は、叔母の3親等であり、2人あわせても10%しか議決権がないので、中心的な同族株主ではありません。
「中心的な株主」とは、課税時期において株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループに、単独で議決権総数の10%以上の議決権を有している株主がいれば、その株主ことです。上の例では、兄も弟も該当しません。
少数株主などの場合に用いられる、特例的評価方式(配当還元)の計算方法
配当還元価額=1株(50円)当たり年配当金額(※)/10%×1株当たりの資本金等の額/50円
※年配当金額=直前期末以前2年間の配当金合計÷2/直前期末の資本金等の額÷50円。ただし、2円50銭未満となる場合は2円50銭
原則的評価方式の2種類:「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」
●図表3 株式の評価方法を決定するまでの流れ(原則的評価方式)
会社規模の判定をする
①従業員数 | ②総資産価額(帳簿価額) | ③取引金額 | 会社規模 | ||||
卸売業 | 小売業・ サービス業 | その他 | 卸売業 | 小売業・ サービス業 | その他 | ||
70人以上 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 大会社 |
35人超 | 20億円以上 | 15億円以上 | 30億円以上 | 20億円以上 | 15億円以上 | ||
4億円以上 | 5億円以上 | 株価評価を引き下げる方法7億円以上 | 5億円以上 | 4億円以上 | 中会社の大 | ||
20人超 | 2億円以上 | 2.5億円以上 | 株価評価を引き下げる方法3.5億円以上 | 2.5億円以上 | 2億円以上 | 中会社の中 | |
5人超 | 7,000万円以上 | 株価評価を引き下げる方法4,000万円以上 | 5,000万円以上 | 2億円以上 | 6,000万円以上 | 8,000万円以上 | 中会社の小 |
5人以下 | 7,000万円未満 | 4,000万円未満 | 5,000万円未満 | 2億円未満 | 6,000万円未満 | 8,000万円未満 | 小会社 |
従業員が70人以上いれば、その時点で大会社に分類されます。
それ以外の会社はまず、「①従業員数」と「②総資産価額」のうち、いずれか表の下にあるほうで判定します。
次に、これと「③取引金額」を比較して、今度はいずれか表の上にあるほうを確認します。
その行の右の列にある「会社規模」が、その会社の規模となります。
特定会社の判定をする
「特定会社」とは、通常の会社規模判定で株価を評価すると不都合が生じる会社を指します。評価対象の会社が次の特定の評価会社に該当する場合には、上で判定した会社規模にかかわらず、原則として純資産価額方式のみで評価することとなります。
株式等保有特定会社や土地保有特定会社はそもそもその会社自体で業績を上げることを目的としていない場合も多く、これらの評価に業績で評価をする類似業種比準価額方式を使ってしまえば、不当に低く評価ができてしまう可能性があるためです。
また、その他の場合には類似業種比準価額方式では会社の実態に即さない可能性が高いでしょう。
そのため、これらの会社は原則として純資産価額方式によって評価すべきとされています。
株式等保有特定会社 | 総資産額に占める株式等の割合50%以上の会社 |
土地保有特定会社 | 総資産額に占める土地等の割合が高い(会社の規模により70%以上または90%以上)会社 |
その他 | ・開業後3年未満の会社 ・直前期末の3要素(配当・利益・純資産)がともにゼロの会社 ・直前期末と前々期末のがともに3要素(配当・利益・純資産)のうち2つがゼロである会社 ・開業前または休業中の会社 |
株式の評価方法を決定する
最後に、評価方法を決定します。
評価方法は、次のとおりです。
なお、特定の評価会社は、上で記載をしたとおり原則として純資産価額方式100%の評価となります。
会社規模等 | 原則の評価方法 | 容認される評価方法 | |
大会社 | 類似 | 純資産 | |
中会社 | 大 | 類似×90%+純資産×10% | |
中 | 類似×75%+純資産×25% | ||
小 | 類似×60%+純資産×40% | ||
小会社 | 純資産 | 純資産×50%+類似×50% |
3つの要素を用いて、上場企業の株価と比べる「類似業種比準価額方式」
類似業種比準方式とは、類似した業種の上場企業の業績などと比較して評価をする方式です。資産の内容よりも、業績(利益)により重きを置いた評価方法だといえます。
●図表7 類似業種比準価額方式の計算式
A:類似業種の株価。国税庁から毎年公表されています。これは、上場会社の評価額をベースに、それぞれの業種の基準となる価額です。
Ⓑ:評価会社の1株当たりの配当金額
B:課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額(国税庁から公表)
Ⓒ:評価会社の1株当たりの利益金額
C:課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額(国税庁から公表)
Ⓓ:評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
D:課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(国税庁から公表)
※計算式の「0.7」は評価対象の会社が大会社である場合です。中会社の場合には0.6、小会社の場合には0.5になります。
貸借対照表の純資産を基準とする純資産価額方式
純資産価額方式とは、会社が持っている資産をすべて売却した場合に得られるであろう「時価」の額をベースとした評価方式です。会社の業績よりも、会社の持っている資産に重きを置いた評価方法です。
1株あたりの評価額=(相続税評価額による総資産価額-相続税評価額による負債総額-評価差額に対する法人税等相当額)÷発行済株式数
純資産価額方式での株価を大まかに計算するためには、貸借対照表の純資産価額を発行済株式数で割るのみです。しかし、純資産価額方式のポイントは、会社が保有する資産や負債を相続税評価額(時価)で評価しなおすべき点にあります。
貸借対照表に掲載する資産の額は、原則として購入した際の価額そのままで構いません。たとえば何十年も前に4,000万円で購入した土地が現在では8,000万円になっていたとしても、貸借対照表には4,000万円のままで記載されていることが通常です。しかし、非上場株式を純資産価額方式で計算するには、これを4,000万円ではなく8,000万円で評価する必要があります。
このように、純資産価額方式では、財産それぞれについて評価時点での相続税評価額に評価しなおした上で、改めて純資産価額を計算します。
類似業種比準価額方式と純資産価額方式の比較
同じ会社の株価を類似業種比準価額方式で評価した場合と、純資産価額方式で評価した場合、一般的には、類似業種比準価額方式のほうが株価は低くなることが多いようです。
特に社歴が長く、厚い内部留保を残している一方、現時点での利益はあまり高くないといった老舗会社では、その傾向があります。
株式会社M&A DXについて
M&A DXでは、大手会計系ファーム出身の公認会計士や税理士、金融機関等出身の専門家が、豊富なサービスラインに基づき、最適な相続をサポートしております。相続や事業承継でお悩みの方は、気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。
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事業承継における自社株対策とは、たとえば、オーナー企業などが事業承継を行う際に、経営者から後継者などに自社株を円滑に譲渡するために講じる施策のことをいいます。
この場合、「自社株の評価額をいかにして引き下げるか」がポイントになります。自社株の評価額が高ければ、後継者などに自社株を譲渡する際に、売却額が高額になります。
また、贈与や相続などによって後継者に自社株を移転する際も、贈与税や相続税の金額が高くなります。自社株を円滑に後継者などの手に渡すためには、自社株の評価額を引き下げて、購入費用や税負担などをできるだけ少なくすることが大切です。
ここでは、非上場株式(税務上は、「取引相場のない株式」といいます)について、税務上の評価方法と、株式評価額の引き下げ方法を紹介します。
適用される自社株の評価方法とは
おもな評価額の引き下げ方法とは
おもな評価額の引き下げ方法としては次のようなものがあります。
1. 配当金額を減らす
配当率の引き下げや配当を見送ることで、株価を下げることができます。ただし、単純に配当を減らすと、内部留保が厚くなって純資産額が増え、評価額が上がる要因となるので注意が必要です。
類似業種比準価額方式による株式評価で用いる配当金額は普通配当のみです。そのため、記念配当(創立○周年記念など)が可能であれば、普通配当を減らし、記念配当によって配当を行うと、内部留保を増加させずに配当金額を減らすことができます。
2. 年利益金額を減らす
年利益金額は3倍で評価するため、この金額を減らすことができれば、評価額引き下げに大きな効果が期待できます。
・役員や従業員への支払い(給与など)を増やす
役員報酬の支給額を増加させて、利益を減少させることができます。なお、役員報酬は「定期同額給与」とするなど一定の要件に該当しなければ、税務上、損金算入できないので注意が必要です。
また、従業員の給与や賞与の支給額を増加させて、利益を減少させることができます。ただし、給与は、いったん引き上げてしまうと引き下げることが難しいので、賞与で対応するのが現実的です。
・役員退職金を支給する
オーナー企業では、就任期間が長期にわたることが多いため、役員退職金は高額になる傾向があります。そのため、役員退職金支給時は、大きな効果が期待できます。
なお、役員退職金は「役員退職金=退職時の役員報酬月額×役員としての勤続年数×功績倍率等」といった算式で計算するのが一般的です。そのため、必要に応じて、役員報酬月額の見直しなども含めて検討する必要があります。
3. 純資産価額を減らす
不要な資産の売却などをして減少させることで、純資産を減らすことができます。純資産価額は、帳簿価額によって計算するので、たとえば時価が簿価を大幅に下回った不動産などの資産があれば、それを時価で売却することで、純資産価額を減少させるだけでなく、含み損を実現して年利益金額を減少させる効果もあります。
4. 第三者割当増資をする
各要素は1株当たりで算出するため、その「分母」となる株式数を増やすことで、各要素の額を引き下げることができます。ただし、単純に株式数を増やすだけでは、株式保有割合は変わらないので、評価額を引き下げることはできません。この方法で評価額を引き下げる場合は、第三者割当増資によって、自身の株式保有割合を減らす必要があります。 なお、自身の株式保有割合の低下が経営権に影響を与える場合があるので、注意が必要です。
5. 平均株価の低い類似業種への移行
複数の事業を営んでいる場合、類似業種は主たる事業(取引金額の割合が50%超の業種)を選択しますが、類似業種比準価額が低い業種に移行できれば評価額を引き下げることができます。
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